更新日:2024/12/27
FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?症状や治療法などを解説
1歳未満の子猫がかかりやすい病気のひとつが「FIP(猫伝染性腹膜炎)」です。命を落としかねない重篤な疾患であり、不安に感じている方も多いでしょう。
万が一、発症した場合はできるだけ早く治療をすることが大切です。 そこで今回は、FIPの症状や治療方法、発症する原因などを解説します。愛猫を危険な病気から守るためにも、ぜひご一読ください。
![子猫イメージ](/wp-content/uploads/2025/01/img_cat-fip_01.jpg)
更新日:2024/12/27
1歳未満の子猫がかかりやすい病気のひとつが「FIP(猫伝染性腹膜炎)」です。命を落としかねない重篤な疾患であり、不安に感じている方も多いでしょう。
万が一、発症した場合はできるだけ早く治療をすることが大切です。 そこで今回は、FIPの症状や治療方法、発症する原因などを解説します。愛猫を危険な病気から守るためにも、ぜひご一読ください。
目次
FIPは、猫伝染性腹膜炎(ねこでんせんせいふくまくえん)といい、猫腸コロナウイルス(FCoV)が突然変異した猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)によって引き起こされます。
猫腸コロナウイルスは、多くの猫が保有していますが、病原性はそれほど高くありません。しかし、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異すると病原性が高くなり、さまざまな症状が現れます。
なお、世界中を不安に陥れた新型コロナウイルスとは別物であり、猫腸コロナウイルスや猫伝染性腹膜炎ウイルスが人間に感染した事例は確認されていません。
猫がFIPに感染した場合の初期症状として、食欲不振や発熱が挙げられます。FIP以外の感染症 や猫風邪 などの可能性もあるため、初期症状だけではFIPが発症していることに気づかない可能性が高いでしょう。
しかし、初期症状を見逃し放置してしまうと、体重の減少や腹水、呼吸不全など、重篤化する恐れがあります。
FIPは「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」の二つに分類されます。
ウェットタイプは、腹水や胸水がたまって特にお腹が大きく膨れ上がる点が特徴です。これにより、肺や消化器が圧迫されて呼吸困難や食欲不振を引き起こします。
一方で、ドライタイプの特徴は、内臓や脳、眼球などに「肉芽種」というしこりができることが特徴です。肝臓や腎臓などに肉芽種ができると、臓器の機能が低下して黄疸や下痢につながります。また、眼球にできた場合には、目が濁る「ぶどう膜炎」や虹彩が腫れる「虹彩炎」になるケースが一般的です。
これら二つの症状を同時に引き起こす混合タイプや途中から症状が変わる事例もあります。
いずれのタイプも進行すると命を落とす恐れがありますが、特にウェットタイプは進行が早く短期間で悪化するケースも少なくありません。
治療をせずに放置した場合の余命は、ウェットタイプが2〜4週間程度、ドライタイプで2〜6ヶ月程度です。 死亡率はほぼ100%ともいわれており、発症した際は速やかに治療する必要があります。
一昔前まで、FIPは不治の病として恐れられていました。しかし、近年は治療方法が開発され、発症後速やかに治療すれば完治も望める病気です。
FIP治療に関しても、にじいろアニマルクリニックで受けることが可能です。詳しい治療方法について解説します。
にじいろアニマルクリニックでは、レムデシビルとモルヌピラビルを用いて治療を行い、合計84日間連続で投薬しています。
1週間〜10日間入院してウイルスの増殖を抑制する「レムデシビル」を静脈内投与(状況により皮下投与)します。状態が安定したら在宅治療に切り替えて、FIPに効果がある「モルヌピラビル」のカプセル剤もしくは粉薬を使用します。
治療に関してはISFM(国際猫医学会)のFIP治療ガイドラインに準拠した一般的な方法で行っています。
にじいろアニマルクリニックでは、正規ルートのFIP治療薬を使用しています。
一般的に、FIP治療薬は、「Mutian」やその類似品が主流です。しかし、これらの多くが中国で製造されており、GS社(ギリアド・サイエンシズ社)の特許を侵害している疑いがあります。また、法的にグレーゾーンの薬品であり、薬価の高さ、品質や使用方法などの安全性が疑問視されていることも問題の一つです。
こうした問題については、獣医師の間でも見解が分かれますが、にじいろアニマルクリニックでは、より安全に投与できる治療薬を選択しています。
にじいろアニマルクリニックは、「キャットフレンドリークリニック(CFC)」の認証を取得しています。同認証は、国際猫医学会(ISFM)が確立した猫に優しい動物病院の国際基準です。認定された動物病院には、高い知識を持った猫専任のスタッフが在籍しており、高レベルの猫医療を提供しています。ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。
猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異する前の猫腸コロナウイルスは、多くの猫が保有しています。猫腸コロナウイルスはは主に糞尿を介して伝染しやすいです。
そのため、外で放し飼いをすると、不特定多数の猫の糞尿に触れる可能性があり、猫腸コロナウイルスへの感染リスクが上がります。
飼い猫の数が多い場合、一匹でも猫腸コロナウイルスを持っている猫がいれば、トイレの共有によって感染しやすくなります。
新たに迎えた猫が感染していれば、他の猫に広がる可能性が高いでしょう。猫腸コロナウイルスに感染しても、必ず猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異し発症するとは限りませんが、多頭飼育で飼育環境が劣悪だったりするとストレスがかかりやすくなり、変異・発症リスクを高くするという報告もあります。
野良猫は、室内で飼われている猫とは異なり、不特定多数の猫と接触する機会が多くあります。そのため、猫腸コロナウイルスを持っている確率も高いため注意が必要です。
特に、先住猫がいる場合は、猫腸コロナウイルスに感染するリスクがあることには考慮が必要です。
ただし、先住猫が既に猫腸コロナウイルスに感染してる可能性もありますし、猫腸コロナウイルスに感染しても必ず猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異し発症するとは限りませんので過度な不安は不要です。そもそも野良猫は色々な病気・感染症にかかっている事が多いので、先住猫がいる家庭では引き取る前に十分検査、治療、予防を行った上で迎え入れることをお勧めします。
近年、保護猫を保護団体やブリーダーから迎えるケースが増えています。殺処分を防ぐうえでも重要な取り組みですが、FIPに関しては注意が必要です。
FIPを防ぐためには、予防法や注意点を押さえておくことが大切です。ここでは、4つのポイントを解説します。
FIPは、猫腸コロナウイルスの突然変異によって発症します。そのため、他の猫から猫腸コロナウイルスに感染しないように留意することが大切です。
特に、外飼いは不特定多数の猫と接する機会を増やしてFIPに限らず他の病気のリスクも高くなります。FIPを防ぐためにも、外飼いは避けたほうが無難でしょう。
万が一、猫腸コロナウイルスを保有していても、突然変異が起こらなければFIPを発症しません。しかし、猫の飼育環境が悪くストレスがかかると、免疫力が下がってFIPを発症する確率が高くなります。
猫がストレスなく快適に過ごすには、室内環境の整備が欠かせません。キャットタワーやお気に入りのおもちゃを用意したり、隠れられるスペースを設けたりして、ストレスの少ない飼育環境を整えましょう。
また、触れ合う時間を多く持つことも大切です。併せて、ブラッシングや爪の手入れなどを行い、清潔な状態を保ちましょう。
FIPを発症した場合、速やかな治療によって完治する可能性が高まります。
そのため、定期的に検査を受けて体の異常の有無を知る必要があります。
FIPの診断手順は以下の通りです。
はじめに、自宅での普段の様子を問診で確認し、身体診察で体の状態を確認します。FIPの初期症状は発熱や食欲不振などが多く、ほかの感染症や猫風邪などと類似するため、慎重に評価しなければなりません。
FIPの疑いが高い場合は、より詳しい検査を実施します。
続いて、肝機能や腎機能、血液中のタンパク質の項目などを検査します。
状態によっては、腹水や胸水が貯留していれば採取して検査をすることもあります。
追加検査として、タンパク質の種類を細かく分析する血清蛋白電気泳動(けっせいたんぱくでんきえいどう)を行います。これにより、炎症性タンパク質の増加状況を確認することが可能です。
腹水が溜まっている場合、水を抜いてPCR検査をします。ただし、ドライタイプの場合は腹水がたまらないため、しこりの組織を採取してPCR検査をすることもあります。これらの検査によって陽性が出れば、FIPを発症している可能性が高いでしょう。
特に、初期段階のFIPは症状が曖昧であり、ひとつの検査だけでは確定できません。そのため、多様な検査をした結果を踏まえて総合的に評価をしたうえで、最終的な診断を行います。
一般的なFIPの治療の流れは以下の通りです。
FIPの診断によって陽性が確定すると以下の治療を開始します。
FIPの治療薬には複数の種類があります。そのなかには、正規ルートで販売されていないものもあるほか、品質や安全性が疑問視されるものも少なくありません。
安全な治療を受けるためには、正規ルートの治療薬を選ぶことが大切です。
FIPの治療薬は、84日間継続して投薬するケースが一般的です。再発や悪化がなければ、投薬完了後に経過観察となります。
FIPを完治させるには、投薬量を厳守することが大切です。投薬量は、猫の体重や症状によって変動します。
獣医師の診断を受けずに投薬量を調節すると、再発や悪化を招く恐れがあるため注意しましょう。
FIPの治療中も適切な管理をして愛猫をケアすることが大切です。
治療中は、定期的に血液検査やエコー検査などを行い身体の状態を確認します。状況によって検査の頻度が変わるため、獣医師の判断を仰ぐことが大切です。
FIP治療では、はじめの1週間〜10日入院したのち状態が安定していれば在宅治療となることが多いです。治療中も症状を観察し、変化があればすぐに対応しなければなりません。そのため、食欲や腹水の状態、体重の増減などを細かく観察して、獣医師と連携を取ることが肝要です。
FIPが完治して、元の元気な状態に戻るためには、84日間の投薬が終わったあとも、丁寧にケアをする必要があります。
FIPの治療後も、定期的な経過観察が必要です。数ヶ月間、再発や悪化などがなければ寛解となります。
なお、FIPの治療は、保険会社の条件によって保険適用となる場合と保険適用外になる場合があります。ただし、正規品以外は対象外となる可能性があるため、正規品を使用して治療する動物病院を選ぶことが大切です。
FIPは、治療した後もウイルスが潜伏しているケースが少なくありません。ウイルスが再び活性化すると、再発してしまう恐れがあります。実際、FIPの再発率は約2.5%とされており、治療後も注意が必要です。
万が一再発した場合は、かかりつけの獣医師に連絡して追加治療を行います。
また、FIPが完治したにも関わらず、軟便や神経障害などの後遺症が残る事例もあります。こうした場合も獣医師の診断を受けて、適切な治療を受けることが肝要です。
FIPを完治するには、適切な治療を施す必要があります。そのためには、猫に関する知識や実績が豊富な獣医師や病院を見つけることが大切です。キャットフレンドリークリニック(CFC)の認証を受けている動物病院は安心して治療を任せられるでしょう。
また、治療方法や費用を検討する際に、飼い主の意思を尊重してくれる動物病院も信頼がおけます。とくに、動物医療は自由診療であり、病院間での料金の取り決めは違法です。そのため、各種料金の設定は病院が独自の判断で行っています。病院によっては高額な治療薬を使っているケースもあり、事前に確認することが大切です。
そのほか、体調の悪い愛猫の負担を軽減させるためには、アクセスの良い動物病院を選んだほうがよいでしょう。交通の便が悪い場所や駅から遠い動物病院は、移動中に大きな負担がかかる可能性があります。
併せて、動物病院では緊急外来が続いていたり手術中だったりすると、すぐに対応できないケースも少なくありません。愛猫に負担をかけないよう、事前に病院へ連絡し可能なら予約をしておくとベターです。
従来、FIPは不治の病といわれていましたが、近年は特効薬が開発され完治が期待できるようになりました。ただし、完治を目指すには正しい治療ができる動物病院を選ぶことが大切です。猫に関する知識や経験が豊富な病院であれば、安心して治療を任せられるでしょう。
また、FIPの症状や治療方法を把握しておくと、万が一発症しても速やかに行動しやすくなります。今回ご紹介した内容を踏まえて、早めに診察を受けるように留意しましょう。
にじいろアニマルクリニックでは、正規ルートの治療薬を使い丁寧なFIP治療を行っています。愛猫の体調が気になる場合は、お気軽にご相談ください。