犬の下痢を放っておかない、原因と種類を理解して適切な対処を

更新日:2023/02/25

犬の下痢を放っておかない、原因と種類を理解して適切な対処を

わんちゃんが下痢をしていても、病院へ行くべきか分からず様子を見ていたり、放っておいたりするケースがあります。
最初は症状が軽度でも、時間の経過と共に重症化したり難治性の下痢になってしまったり、中には急速に下痢症状が悪化する場合もあります。

そこで今回は、犬の下痢の原因、犬の下痢の種類(病院へ行った方が良いのか、自宅で対処できるかの判断基準)、病院での犬の下痢の治療内容や自宅で対処できる場合の対処法についてご説明します。

犬の下痢の原因は非常に多岐に渡ります。治療により短期間で症状が改善する場合もありますが、中には症状が長期化したり、容態が急変し命に関わる場合もあります。
ただの下痢と考えずに早めの受診を心がけましょう。


犬の下痢イメージ

1.犬の下痢の種類

犬は人よりもやや固めのコロコロのウンチが正常便とされています。勿論、人のように個体差があり、正常な時のウンチが少し軟らかめのワンちゃんもいれば、カチコチのかなり固めのウンチのワンちゃんもいます。下痢をしているかどうかは、ご自宅のワンちゃんのいつもの固さを基準にし、それよりも軟らかくなっているかどうかで判断するのがお勧めです。
(*)以下の解説中のウンチの固さは、一般的に正常便とされるコロコロの固さのウンチを基準にしています。

また、下痢をすると消化不良になり、腸内細菌のバランスが乱れてガスが産生されやすくなりオナラが多くなったり、下痢による腹痛で(特に小型犬で)震えの症状が出たり、腸の蠕動運動が活発になり腹鳴(お腹がゴロゴロと鳴るようになる)が目立ったり、下痢をしていると排泄物と一緒に体の水分が減少することで脱水症状を起こすこともあります。


犬の下痢の種類 イメージ

下痢の種類1・便の固さの違いによる分類

軟便:

軟便とは、通常のウンチの形状を保っているものの、水分量が多く持ち上げたり掴んだりすると形がすぐ崩れてしまう固さの便のことです。飼い主さんによっては軟便を下痢と認識していないことがありますので、今一度自宅のワンちゃんのいつものウンチの固さを確認してみると良いでしょう。

軟便が1日のうちに1〜2回見られただけでその後は続かず、その他の症状がなく食欲元気がいつも通りであれば問題ないことが多いです。ただし、1日のうちに何度もみられる、毎日続く、その他の症状(嘔吐がみられる、元気がない、ぐったりしている、食欲が落ちている、食欲がない、食欲が全くないなど)がみられるようであれば病院に行くことをお勧めいたします。

泥状便:

泥状便とは、軟便よりも水分量が多くウンチの形状を保てなくて形がなく、まさに泥のような状態の便のことです。この段階になって初めて下痢と認識してご来院される飼い主さんが多いかと思います。泥状便が1日のうちに1回見られただけで、その後は続かず、その他症状がなく食欲元気がいつも通りであれば問題ないことが多いです。ただし、1日のうちに何度もみられる、毎日続く、その他の症状(嘔吐がみられる、元気がない、ぐったりしている、食欲が落ちている、食欲が全くないなど)がみられるようであれば病院に行くことをお勧めいたします。

水様便:

水様便とは、泥状便よりもさらに水分量が多く水のようにサラサラとした状態の便のことで、水下痢と呼ぶ方もいらっしゃいます。軟便や泥状便と比べて水様便は体内の水分や電解質が喪失しやすく重症化することが多いため、その他の症状がなくても病院に行くことを強くお勧めします。

その他の便の種類

粘液便

大腸の粘膜から分泌されるゼリー状の粘液が混じった便です。下痢便に混じってみられることがありますが、正常な固さのウンチに粘液が付着しているだけのこともあります。主に大腸性下痢で見られます。

鮮血便・出血便

大腸で出血した赤い血が付着した便です。ワンちゃんは下痢をした時に人と比べて大腸の粘膜が傷つきやすい傾向があり、出血を伴う便が比較的多く見られます。人では血便=大腸癌のイメージがあり、飼い主さんからよくお問い合わせがありますが、幸いワンちゃんは大腸癌自体の発生率が低く、また、血便が大腸癌の兆候になることが少ないです。主に大腸性下痢で見られます。

粘血便

粘液便と鮮血便が混ざった便です。主に大腸性下痢で見られます。

下痢の種類2・下痢の原因となっている場所による分類

小腸性下痢

小腸(十二指腸、空腸、回腸をまとめて“小腸”と呼びます。)が原因場所になっている下痢の総称です。通常は、体重の減少がみられたり、時折黒色便(メレナ)を伴います。便の回数は正常ですが、排便量が多くなることがあります。初期の頃は“しぶり”がみられません。

大腸性下痢

大腸(盲腸、結腸、直腸をまとめて“大腸”と呼びます。)が原因場所になっている下痢の総称です。通常は、便の回数が多く出血便、粘液便や“しぶり”を伴うことがあります。体重の減少や排便量の増加はあまり起こりません。

下痢の種類3・時間の経過による下痢の分類

急性下痢

下痢の症状がでて間もない、或いは短期間(通常数日間)だけ続く場合を急性下痢と言います。犬の急性の下痢は通常一般的な下痢の治療に良く反応し、短期間で症状が消失することが多いですが、中には急激に状態が悪化するケースもあるので注意は必要です。

慢性下痢

数週間以上(主に3週間以上)続く下痢症状を慢性下痢と言います。一般的な下痢の治療に反応しにくく、難治性のことが多い下痢です。通常、様々な検査や治療を要します。

その他・症状や用語の補足

嘔吐(吐く)

消化管は口から肛門まで一続きの臓器のため、下痢の影響で上部の消化管に影響し嘔吐(吐き)を二次的に誘発することがよくあります。この場合はあくまで原因になっている下痢の治療をメインで考えて行く必要があります。小腸性下痢と大腸性下痢両方でみられます。

白色便

主に脂肪分を多く含んで白っぽい色になった便のことです。膵臓のトラブルで脂肪の分解や吸収ができなくなった場合にみられます。

黒色便(メレナ)

主に小腸の粘膜から出血した赤い血が、時間の経過で酸化し変色してウンチに混ざり黒っぽい色になった便のことです。

しぶり

排便時にウンチが出にくかったり、痛みを伴うためにイキんだり、ウンチがでた後もしばらくイキんで排便姿勢をとる症状で、主に大腸性下痢でみられることが多いです。

いきみ

ウンチを出すためにお腹に力を入れて排便姿勢などをとる行動・仕草のことです。『しぶり』とは区別されます。

(*)上記のうち泥状便、水様便、粘血便などの場合、下痢に加えて嘔吐(吐き)があったり、食欲が落ちている、食欲がない、ぐったりしているなど他の症状もみられる場合はすぐに病院へご連絡ください。

立川駅周辺の方は、当院にじいろアニマルクリニックへお気軽にご相談ください。当コラムを見たとお伝え頂くとスムーズです。

にじいろアニマルクリニック
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2.犬の下痢の原因

犬の下痢の原因は非常に多岐にわたりますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
まず下痢の原因を探る際に、下痢の症状が出てからの時間経過で分類していくのが一般的で、急性下痢慢性下痢に分けられます。

犬の下痢の原因 イメージ

急性下痢

下痢の症状がでて間もなく短期間(通常数日間)だけ続く場合を急性下痢と言います。犬の急性の下痢は通常一般的な下痢の治療に良く反応し、短期間で症状が消失することが多いですが、中には急激に状態が悪化するケースもあるので注意は必要です。

《犬の急性下痢の主な原因》

食物、生活環境の変化やイベント事(特に小型犬:チワワ、トイプードルやポメラニアンなどで)、異物の誤食、寄生虫、細菌、ウイルスなどが主にあげられます。
以下、犬の急性下痢で代表的なものを解説します。

食事が原因の犬の下痢

食事が原因の犬の下痢は、食事の食べ過ぎ(摂取過多)、食事内容の急激な変更(特に子犬の場合)、食べたことがないおやつの摂取、過剰な水分摂取、劣化した食事の摂取、品質の悪い食事の摂取、食物アレルギー(食事アレルギー、食物不耐性)などが挙げられます。

生活環境の変化やイベント事(特に子犬、小型犬や高齢犬)後の犬の下痢

トリミングに行ってきた、ドッグランに行ってきた、ペットホテルに預けていた、飼い主さんの生活リズムの変化による影響(出勤時間、散歩の時間やご飯を与える時間が変わった)、近隣で工事をしているなど、ワンちゃんの生活環境の変化やイベント事によって、特にストレスに弱い子犬、小型犬(特にチワワ、トイプードルやポメラニアンなど)および高齢犬などで下痢をしてしまうことがよくあります。

異物の誤食が原因の犬の下痢

異物の誤食が原因による犬の下痢は、特に何でも口にいれてしまう若い時期のワンちゃんに多くみられますが、大人のワンちゃんでも日常的に物をカジって飲み込むクセがある場合には要注意です。何の前触れもない突発的な下痢や頻回の嘔吐を伴う場合に可能性が疑われます。

寄生虫が原因の犬の下痢

ワンちゃんはお腹の寄生虫による下痢を発症することがあります。特に子犬の時期は、母親犬、兄弟犬、ペットショップやブリーダーの飼育環境中から寄生虫が伝染している場合があります。回虫という白い紐状の虫(広義で線虫に分類されます)が一般的に多いです。その他には、鞭虫、ジアルジア、トリコモナス、コクシジウム、マンソン裂頭条虫、糞線虫などが見られます。
犬の寄生虫による下痢は糞便検査が非常に重要なので、排泄物は全て廃棄せず少量(小指の先程度の大きさで十分です)だけとっておきましょう。ウンチはなるべく来院直前にしたウンチを常温のまま、アルミホイルやラップなどの水分を吸収しないもので包みさらにビニール袋などに入れて動物病院に持参しましょう。

ウイルスが原因の犬の下痢

ウイルスが原因で犬が下痢をする場合があります。代表的なウイルスとしては、犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス、犬コロナウイルス、犬ロタウイルスなどが挙げられます。特に初年度の混合ワクチン接種プログラムを完了していない、もしくは混合ワクチンを接種したことがない子犬の時期は、犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルスおよび犬アデノウイルスの感染による下痢は致死率も高いため要注意です。

その他の犬の急性下痢の主な原因

細菌による下痢(サルモネラ、クロストリジウム、大腸菌、カンピロバクター、レプトスピラなど)、過敏性腸症候群、毒物の摂取(玉ねぎやネギなど犬にとって有毒な人の食べ物の誤食、生ゴミの誤食、化学物質、薬剤など)、急性膵炎、副腎皮質機能低下症(アジソン病)などが主に挙げられます。

慢性下痢

数週間以上(主に3週間以上)続く下痢症状を慢性下痢と言います。一般的な下痢の治療に反応しにくく、治療が長期化し難治性のこともある下痢です。通常、様々な検査や治療を要します。

《犬の慢性下痢の主な原因》

犬の慢性の下痢の原因は多岐にわたりますが、主なものとしては寄生虫性腸炎、細菌性腸炎、タンパク漏出性腸疾患(炎症性腸疾患、腸リンパ管拡張症)、抗菌薬反応性腸症、腫瘍性腸疾患(胃腸管リンパ腫、腸の腺癌、大腸ポリープなど)、食物アレルギー(食事アレルギー・食物不耐性)、各種臓器の慢性疾患による二次性の下痢などが挙げられます。
以下、犬の慢性下痢で代表的なものを解説します。

炎症性腸疾患

胃、小腸および大腸の腸壁に炎症細胞(白血球のリンパ球、好中球、形質細胞など)が悪影響を及ぼすことで発症する慢性消化器障害を『炎症性腸疾患(略してIBDと言われます)』と言います。病気の原因は完全に解明されてはいませんが、遺伝的要因、食事環境、細菌、腸粘膜の性状、免疫システムの異常などが関与していると考えられています。病態の種類によっては、一部の犬種(ジャーマンシェパード、ソフトコーテッドウィートンテリア、バセンジー、ボクサー)で発症しやすい傾向が報告されています。

胃腸管リンパ腫

胃腸管リンパ腫は犬の消化管に発生する腫瘍の中で最も多い腫瘍であるとされています。血液細胞の中のリンパ球が癌化したもので、中齢期〜高齢期のワンちゃんで多く発生するとされていますが、時々若齢の犬でも発生することがあるため注意を要します。広義では蛋白漏出性腸症に分類され、下痢、嘔吐、食欲不振や体重減少などの一般的な消化管症状がみられることから、単純な下痢と勘違いされ、見落とされている場合もあります。

食物アレルギー(食事アレルギー、食物不耐性)

犬の食物アレルギーは、食物中の抗原に対して生体が免疫学的反応を起こす事で皮膚症状や消化器症状を呈する病気のことです。遺伝的な要因があると考えられています。皮膚症状としては、通年性の皮膚の痒みを特徴としており、症状の初期では皮膚が赤くなる(紅斑といいます)、皮膚の脱毛などがあり、慢性化すると皮膚の黒いシミ(色素沈着といいます)や、皮膚が硬くなりゴツゴツとしたシワが形成されたりします(苔癬化といいます)。また、外耳炎を発症したりもします。消化器症状としては、下痢、嘔吐、軟便、排便回数増加、腹鳴、および放屁などがみられます。犬の食物アレルギーは若い時期(1歳以下)から発症することが知られており、食物アレルギーを発症している犬のうちでその1/2〜1/3を占めるとされています。

各種臓器の慢性疾患による二次性の下痢

近年、人の医学領域では体内の臓器が各々密接した関わり合いを築いていることが解明されてきており、ワンちゃんの生体内も同様のことが起こっているという事が徐々にわかってきています(このような考え方を『臓器連関』といいます)。その為、肝臓、腎臓、心臓、および膵臓などの臓器で慢性疾患を患っているワンちゃんでは、その臓器の不調が胃と腸に影響を及ぼし、蠕動運動が低下するなどの理由で、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。

3.犬の下痢 動物病院で行われる検査内容

既に述べた通り、犬の下痢の原因は非常に多岐に渡り複雑な為、原因究明のための検査も多種多様です。問診、身体検査、糞便検査、ウイルス検査、血液検査、尿検査、単純レントゲン検査、造影レントゲン検査(バリウムなど)、エコー検査、細胞診検査、内視鏡検査(経内視鏡生検)、試験開腹手術、切除組織生検(病理検査)、CT検査、MRI検査、アレルギー検査、などがあります。

⇒詳しくは別ページにてご説明いたします。

4.犬の下痢 動物病院で行われる治療内容

犬の下痢の際に動物病院で行われる治療方法は、下痢の原因によって異なる為、下痢の原因の種類と同様に非常に多岐にわたります。軽度下痢(一過性の急性下痢)、重度下痢(急性下痢、慢性下痢)、寄生虫性下痢、細菌性下痢、ウイルス性下痢、炎症性腸疾患、胃腸管リンパ腫、食物アレルギーなどがあります。

⇒詳しくは別ページにてご説明いたします。

5.犬の下痢はどれくらいで治るのか

犬の下痢はその原因によって、治療期間は様々です。前述の代表的な下痢の原因において、治療がどのくらい必要かを解説いたします。以下記載の治療期間は、ワンちゃんの状態や原因によってその都度異なる為、あくまで目安の期間となりますのでご了承下さい。

犬の治療 イメージ

犬の比較的軽度の急性下痢の場合は、比較的短期間の数日〜1、2週間で完治することがほとんどです。
犬の重症の急性下痢の場合は、入院治療が必要になるかで治るまでの期間は大きく変わりますが、目安として2週間〜数ヶ月治療を要することがあります。一方で、犬の重症の慢性下痢の場合は、数ヶ月〜数年、あるいは生涯治療を続ける場合もあります。

犬の寄生虫性下痢細菌性下痢の場合は、原因となっている寄生虫の駆虫や細菌のコントロールや除菌が上手くいけば比較的短期間の数日〜1、2週間程で良化することがありますが、時折薬剤耐性の寄生虫や細菌などの問題により駆虫、細菌のコントロールや除菌がスムーズにいかない場合があり長期間治療を要することもあります。

犬のウイルス性の下痢の場合、下痢の原因ウイルスや犬の状態によってその重症度が異なります。犬コロナウイルス犬ロタウイルスが原因の犬のウイルス性下痢は比較的軽症が多く数日〜1、2週間で良化することが多いですが、仔犬の時期は重症化し2週間〜数ヶ月治療を要することもあります。犬パルボウイルス犬ジステンパーウイルスなどが原因の犬のウイルス性下痢は、特に仔犬で重症化することが多く治療期間も長期間要する場合があります。治療期間の目安は犬の状態、犬の月齢やその他の合併症の有無によりますが、目安として2週間〜数ヶ月かかることがあり、最悪亡くなってしまう場合もあります。

犬の炎症性腸疾患犬の食物アレルギーによる下痢の場合は、症状が軽度のものは寛解する場合もありますが、通常治療は長期間要することが多く生涯治療が必要なこともあります。犬の炎症性腸疾患ではその治療にステロイド系のお薬がメインで使用されるため、長期投与の場合は薬の副作用のリスクを考慮する必要があります。そのため使用する薬剤の量は最小限に調整したり、ステロイド系のお薬でも副作用のリスクが少ない新しいタイプの薬を使用したり、免疫抑制剤やその他の薬を併用することでステロイド系の薬の使用量を減らしたりします。食事療法が中心の犬の食物アレルギーに対して使用される処方食は、可能な限り使い続けるのが推奨されます。

犬の胃腸管リンパ腫による下痢の場合、治療は通常長期間を要します。胃腸管リンパ腫は残念ながら完治することは難しい病気で、無治療の場合や進行が早く悪性度が高いタイプですと、半月〜2ヶ月位の間に亡くなってしまうケースもあります。使用する抗がん剤の種類やその使用方法などにより期間は異なりますが、通常は数ヶ月〜再発するまで使用されることもあります。また、犬の胃腸管リンパ腫は治療を行った場合の余命が半年〜長くて2、3年ほどとされています。

6.犬の下痢で飼い主さんが自宅で対処できる場合の対処法

犬が下痢をした時に飼い主さんが自宅できる対処法がいくつかありますのでご紹介します。

犬が下痢をした際の普段の生活について

犬が下痢をしている場合は、なるべく自宅では安静にしておくことが必要です。ワンちゃんの状態や性格にもよりますが激しい運動やドッグランに行くのは控え、散歩も歩く距離は少なめor 最小限にすると良いかと思います。トリミングやシャンプーなどのお手入れも極力下痢が落ち着くまで延期することをお勧めいたします。

犬が下痢をした場合の食事や飲み水について

犬の下痢が軽度で嘔吐がみられない場合は、食事や飲み水の量を通常より制限し(半分〜1/10量)、なるべく少量頻回に与えるのが推奨されます。下痢が落ち着いているようであれば数日かけて(3日前後)通常量に戻していくと良いでしょう。
重症な下痢や嘔吐が頻回に見られる場合は基本的に動物病院を受診することをお勧めしますが、受診が難しい場合の対処方法としては、一時的に食事や飲み水をストップし、半日くらい様子をみて症状が落ち着いているようであればごく少量の食事と飲み水を与え、その後も下痢や嘔吐がみられなければ少量頻回与えていくとよいです。

(*)従来は犬の下痢や嘔吐の症状に対して、絶食絶水の対応をすることが多かったですが、現在は胃腸がある程度機能している場合は食事や飲水の制限はかえって良くないことが分かってきていますので、闇雲な絶食絶水は推奨されていませんのでご注意ください。判断に迷う場合は必ず動物病院に相談するようにしましょう。

犬の下痢を採材

既述の通り犬の下痢では、見た目の便の性状や色を確認したり、糞便検査をすることが非常に重要なことが多いため、排泄物は全て廃棄せず少量(小指の先程度の大きさで十分です)だけとっておきましょう。ウンチはなるべく来院直前にしたウンチを常温のまま、アルミホイルやラップなどの水分を吸収しないもので包みさらにビニール袋などに入れて動物病院に持参しましょう。

犬の下痢の原因が異物摂取や誤食の場合

異物摂取や誤食によって犬が下痢している可能性が高い場合、誤食した可能性がある食べ物や異物の残りが余っていれば持参すると良いです。実物を持参する目的としては、検査中にレントゲンやエコーで実際どのように画像に映し出されるかを評価できるため診断に有用なことがあるためです。食べ物であれば成分表示が記入されている袋や用紙を一緒にお持ちするとベターかと思います。

犬が下痢をしている時の市販の整腸剤やサプリメントの使用について

犬が下痢をしている時に、市販の整腸剤(乳酸菌製剤など)やサプリメントの使用について動物病院へ問い合わせが時々あります。市販の製品やサプリメントは品質が一定でなかったり効果が非常に弱いので、使用することを動物病院としてはお勧めしませんが、下痢症状が極軽度の短期間の軟便で、過去に難治性下痢での既往歴がない場合に限り、使用してみるのはありなのかなと思います。ただし、下痢症状が治らない、ワンちゃんの状態が悪くなるようなら早めに動物病院へご相談しましょう。

まとめ

まずは犬の下痢の種類や原因を理解し、適切な対応を心がけましょう。
ここまでに記載した犬の下痢の種類に当てはまらない、もしくは判断ができない場合は必ず動物病院にご相談ください。
冒頭でお伝えした通り、犬の下痢の原因は非常に多岐に渡ります。その為、犬の下痢の原因を特定するために様々な検査が必要となります。その過程で下痢をした便を調べる事も重要なので、排泄物は全て捨ててしまったりせず一部を検査用に確保しておいて受診の際に必ずご持参ください。
犬の下痢は原因が多岐に渡る為、その治療方法や治療期間も様々です。犬の下痢の症状が短期間で軽い場合は自宅で飼い主さんができる対処方法もいくつかありますが、難治性の下痢や重症化する下痢の場合は根気がいる治療が必要となることもありますので、たかが下痢と油断せずに注意深くワンちゃんの様子や状態を観察しながら適切な対応を心掛け、状態が悪そうであれば迷わず動物病院のスタッフに相談しましょう。

監修:にじいろアニマルクリニック 院長 獣医師 石塚 洋介

参考文献:

・SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE 3rd ed; Interzoo.

・犬と猫の治療ガイド2015; interzoo.

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