1.犬の下痢の種類
犬は人よりもやや固めのコロコロのウンチが正常便とされています。勿論、人のように個体差があり、正常な時のウンチが少し軟らかめのワンちゃんもいれば、カチコチのかなり固めのウンチのワンちゃんもいます。下痢をしているかどうかは、ご自宅のワンちゃんのいつもの固さを基準にし、それよりも軟らかくなっているかどうかで判断するのがお勧めです。
(*)以下の解説中のウンチの固さは、一般的に正常便とされるコロコロの固さのウンチを基準にしています。
また、下痢をすると消化不良になり、腸内細菌のバランスが乱れてガスが産生されやすくなりオナラが多くなったり、下痢による腹痛で(特に小型犬で)震えの症状が出たり、腸の蠕動運動が活発になり腹鳴(お腹がゴロゴロと鳴るようになる)が目立ったり、下痢をしていると排泄物と一緒に体の水分が減少することで脱水症状を起こすこともあります。
下痢の種類1・便の固さの違いによる分類
軟便:
軟便とは、通常のウンチの形状を保っているものの、水分量が多く持ち上げたり掴んだりすると形がすぐ崩れてしまう固さの便のことです。飼い主さんによっては軟便を下痢と認識していないことがありますので、今一度自宅のワンちゃんのいつものウンチの固さを確認してみると良いでしょう。
軟便が1日のうちに1〜2回見られただけでその後は続かず、その他の症状がなく食欲元気がいつも通りであれば問題ないことが多いです。ただし、1日のうちに何度もみられる、毎日続く、その他の症状(嘔吐がみられる、元気がない、ぐったりしている、食欲が落ちている、食欲がない、食欲が全くないなど)がみられるようであれば病院に行くことをお勧めいたします。
泥状便:
泥状便とは、軟便よりも水分量が多くウンチの形状を保てなくて形がなく、まさに泥のような状態の便のことです。この段階になって初めて下痢と認識してご来院される飼い主さんが多いかと思います。泥状便が1日のうちに1回見られただけで、その後は続かず、その他症状がなく食欲元気がいつも通りであれば問題ないことが多いです。ただし、1日のうちに何度もみられる、毎日続く、その他の症状(嘔吐がみられる、元気がない、ぐったりしている、食欲が落ちている、食欲が全くないなど)がみられるようであれば病院に行くことをお勧めいたします。
水様便:
水様便とは、泥状便よりもさらに水分量が多く水のようにサラサラとした状態の便のことで、水下痢と呼ぶ方もいらっしゃいます。軟便や泥状便と比べて水様便は体内の水分や電解質が喪失しやすく重症化することが多いため、その他の症状がなくても病院に行くことを強くお勧めします。
その他の便の種類
粘液便
大腸の粘膜から分泌されるゼリー状の粘液が混じった便です。下痢便に混じってみられることがありますが、正常な固さのウンチに粘液が付着しているだけのこともあります。主に大腸性下痢で見られます。
鮮血便・出血便
大腸で出血した赤い血が付着した便です。ワンちゃんは下痢をした時に人と比べて大腸の粘膜が傷つきやすい傾向があり、出血を伴う便が比較的多く見られます。人では血便=大腸癌のイメージがあり、飼い主さんからよくお問い合わせがありますが、幸いワンちゃんは大腸癌自体の発生率が低く、また、血便が大腸癌の兆候になることが少ないです。主に大腸性下痢で見られます。
粘血便
粘液便と鮮血便が混ざった便です。主に大腸性下痢で見られます。
下痢の種類2・下痢の原因となっている場所による分類
小腸性下痢
小腸(十二指腸、空腸、回腸をまとめて“小腸”と呼びます。)が原因場所になっている下痢の総称です。通常は、体重の減少がみられたり、時折黒色便(メレナ)を伴います。便の回数は正常ですが、排便量が多くなることがあります。初期の頃は“しぶり”がみられません。
大腸性下痢
大腸(盲腸、結腸、直腸をまとめて“大腸”と呼びます。)が原因場所になっている下痢の総称です。通常は、便の回数が多く出血便、粘液便や“しぶり”を伴うことがあります。体重の減少や排便量の増加はあまり起こりません。
下痢の種類3・時間の経過による下痢の分類
急性下痢
下痢の症状がでて間もない、或いは短期間(通常数日間)だけ続く場合を急性下痢と言います。犬の急性の下痢は通常一般的な下痢の治療に良く反応し、短期間で症状が消失することが多いですが、中には急激に状態が悪化するケースもあるので注意は必要です。
慢性下痢
数週間以上(主に3週間以上)続く下痢症状を慢性下痢と言います。一般的な下痢の治療に反応しにくく、難治性のことが多い下痢です。通常、様々な検査や治療を要します。
その他・症状や用語の補足
嘔吐(吐く)
消化管は口から肛門まで一続きの臓器のため、下痢の影響で上部の消化管に影響し嘔吐(吐き)を二次的に誘発することがよくあります。この場合はあくまで原因になっている下痢の治療をメインで考えて行く必要があります。小腸性下痢と大腸性下痢両方でみられます。
白色便
主に脂肪分を多く含んで白っぽい色になった便のことです。膵臓のトラブルで脂肪の分解や吸収ができなくなった場合にみられます。
黒色便(メレナ)
主に小腸の粘膜から出血した赤い血が、時間の経過で酸化し変色してウンチに混ざり黒っぽい色になった便のことです。
しぶり
排便時にウンチが出にくかったり、痛みを伴うためにイキんだり、ウンチがでた後もしばらくイキんで排便姿勢をとる症状で、主に大腸性下痢でみられることが多いです。
いきみ
ウンチを出すためにお腹に力を入れて排便姿勢などをとる行動・仕草のことです。『しぶり』とは区別されます。
(*)上記のうち泥状便、水様便、粘血便などの場合、下痢に加えて嘔吐(吐き)があったり、食欲が落ちている、食欲がない、ぐったりしているなど他の症状もみられる場合はすぐに病院へご連絡ください。
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