更新日:2023/04/22
動物病院で行われる検査の種類
犬の下痢の原因は非常に多岐に渡り複雑な為、原因究明のための検査も多種多様です。
問診、身体検査、糞便検査、ウイルス検査、血液検査、尿検査、単純レントゲン検査、造影レントゲン検査(バリウムなど)、エコー検査、細胞診検査、内視鏡検査(経内視鏡生検)、試験開腹手術、切除組織生検(病理検査)、CT検査、MRI検査、アレルギー検査、などがあります。
以下に犬の下痢症状の際、動物病院で行われる検査内容の詳細について解説いたします。
更新日:2023/04/22
犬の下痢の原因は非常に多岐に渡り複雑な為、原因究明のための検査も多種多様です。
問診、身体検査、糞便検査、ウイルス検査、血液検査、尿検査、単純レントゲン検査、造影レントゲン検査(バリウムなど)、エコー検査、細胞診検査、内視鏡検査(経内視鏡生検)、試験開腹手術、切除組織生検(病理検査)、CT検査、MRI検査、アレルギー検査、などがあります。
以下に犬の下痢症状の際、動物病院で行われる検査内容の詳細について解説いたします。
厳密には検査ではありませんが、下痢の原因を特定するためには欠かせない非常に重要なプロセスです。飼い主さんは動物病院を受診した際、ワンちゃんの下痢の経過を可能な限り詳しく正確に問診票へ記入し、動物病院スタッフから直接問診をする際にも正確な情報を伝える事が必要です。事前に情報整理の為にも、下痢の経過をメモなどにまとめておくことをお勧めします。また、持病があったり、過去の病歴、普段食べているもの、ワクチンなどの予防関係の履歴、生活環境などの情報もあらかじめ整理しておくと良いかと思います。
飼っている3歳のトイプードル(去勢済みの雄犬)が、1週間前から下痢をしている。しぶりを伴う泥状の粘液便が出ており、排便回数は多く少量頻回、排便量には変化がない。本人は元気食欲に異常はなく、嘔吐はしていない。お水を飲む量、排尿量は特に変化無し。持病は特になく、オモチャや拾い食いによる異物摂取の可能性はない。思い返すとドッグランに行き帰宅したあたりから症状がみられていた。ご飯は通常ドライフードでおやつにビスケットを少々与えており、各々変更していない。ドッグランに行くとよく下痢をすることが多く、過去に他の飼い主さんからオヤツをもらって下痢をしたことが何度かあり、今回もドッグランで遊んでいる時、いつも食べていないジャーキーをたくさんもらって食べていた。ワクチンなどの予防接種、フィラリア症やノミダニの予防などは定期的に行っている。
→この飼い主さんからの情報は大変貴重で、この問診内容により多種多様な犬の下痢の原因をかなり絞り込んでいくことが可能です。
→急性の大腸性の下痢である可能性が高く、重症度は低いと判断される。イベント事(今回はドッグランに行った)による一過性のストレス性の下痢、食べ物(おやつでもらったジャーキー)からくる食事の摂取過多や食物アレルギー性(食事アレルギー、食物不耐性)の下痢などの可能性があげられます。ウイルス性の下痢の可能性はやや低く、腫瘍の可能性も低い。その他の可能性としては、細菌、寄生虫や内臓関連の下痢の可能性などが考えられます。
主に五感を駆使した診察を中心とした検査です。以下、身体検査について解説します。
意識状態はしっかりしているか(特に中毒物質の影響はないか)、口や目の粘膜の色は問題ないか(黄疸の有無、結膜の充血)、体が痛そうな姿勢をしていないか、痩せていないか等の判断をします。
心臓や肺が弱っているときに発生する雑音がないか、心拍数や呼吸数は問題ないか、腹鳴(お腹のゴロゴロするような音)がないか、腸の蠕動運動が活発か等の判断をします。
体のどこかを痛がっていないか(特に腹部痛はないか)、脱水の兆候がないか(口の粘膜が湿潤か、皮膚の張りが問題ないか)、しこり(腫瘤・腫瘍など)や異物(特にお腹)が触知されないか、体の表面のリンパ節が腫れていないか、脈がしっかり触れるか(血圧が下がっていないか)、胸やお腹が張っていないか等の判断をします。
胸やお腹に水が溜まっていないか、胃腸に空気・ガスが溜まってないか等の判断をします。
発熱していないか、多飲多尿はないか等を確認します。
犬の下痢で必ず行われる検査の一つです。従来の単純な下痢便の性状を分析したり、寄生虫を検出するものから、専門的な検査もあります。以下、犬の下痢の際に行われる糞便検査について解説します。
犬の下痢便を顕微鏡で拡大して調べる検査方法で、代表的な便検査です。主に、寄生虫の感染の有無(回虫、鞭虫、コクシジウム、ジアルジア、腸トリコモナス、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、糞線虫など)、腸内細菌の性状の確認(悪玉菌の増加や有害細菌の関与の有無など)、その他、消化不良の兆候(デンプン顆粒の有無など)などを調べます。
犬の下痢便を試薬等で混合・調整し、顕微鏡で拡大して寄生虫の卵を検出する検査方法です。検査結果が出るまでに少し時間がかかり、30分〜1時間位を要します。
犬のウイルス性の下痢で、特に子犬が感染し発症すると重症化することがあるパルボウイルスの簡易抗原検査が一般的です。持参したウンチで検査が可能で、20〜30分程度で検査結果が出ます。その他には、少量の便を検査センターに提出しPCR検査で各種のウイルスの関与がないかを調べる検査もあります。
犬の細菌性の下痢で、有害な細菌(クロストリジウム、カンピロバクターなど)が関与していないかどうかを調べる糞便培養検査です。動物病院に持参したウンチで検査が可能ですが、検査結果が出るまで1週間前後の日数がかかります。
犬の細菌性の下痢やウイルス性の下痢で、有害な細菌やウイルスが関与していないかどうかを調べためのPCR検査もあります。こちらも持参のウンチで検査が可能で、検査結果が出るまで数日かかります。
便を特殊な液体で染色し便の性状を調べる検査などがあります(例:ズダンⅢ染色=脂肪成分を特定する方法、ヨード染色=デンプン顆粒を特定する方法)。
(*)飼い主さんへのお願い
前述の通り、犬の下痢は糞便検査が非常に重要なので、排泄物は全て廃棄せず少量(小指の先程度の大きさで十分です)だけとっておき、なるべく来院直前にしたウンチを常温のまま、アルミホイルやラップなどの水分を吸収しないもので包み、さらにビニール袋などに入れて動物病院へ持参しましょう。
犬の下痢の原因が血液や内臓の病気に関連しているかどうかを特定するための検査です。以下、犬の下痢の場合に行われる血液検査について解説します。
犬の下痢の原因が血液の血球成分によるものかを調べる検査です。赤血球の数と濃度、白血球の数と種類、血小板の数などを測定します。場合によっては、血液塗抹検査という検査を併用します(顕微鏡を使用し、血球成分を直接眼で確認して血球の形態の変化、血球の各々の詳しい数と種類を測定および犬の血液中や血球中に寄生する寄生虫の有無を確認する検査)。検出できる犬の血液関連の病気や症状は、免疫介在性溶血性貧血、血小板減少症、汎白血球減少症、DIC=播種性血管内凝固、犬の白血病(犬の急性リンパ性白血病、犬の慢性リンパ性白血病、犬の急性骨髄性白血病、犬の慢性骨髄性白血病など)、犬のリンパ腫、犬の腫瘍細胞の血行性転移、犬のバベシア症、犬糸状虫症、犬の中毒物質による赤血球の形態異常(タマネギ中毒など)等があります。
犬の下痢が内臓の病気に関連しているかどうかを調べる一般的な血液検査です。
主に、犬の肝臓、腎臓および膵臓の病気の検出に有用です。また、犬のホルモン疾患の可能性を検出できる場合があり(主に甲状腺機能低下症、糖尿病、クッシング症候群、アジソン病)、検査結果でホルモン疾患が疑わしい時は、後述する尿検査、追加の血液検査や犬のホルモン濃度を調べる血液検査、を行います。
犬の下痢の原因がホルモン疾患に関連したものかを調べる検査で、主に犬の甲状腺ホルモンの病気(犬の甲状腺機能低下症)、犬の副腎ホルモンの病気(副腎皮質機能亢進症=クッシング症候群、副腎皮質機能低下症=アジソン病)などの病気を検出します。
犬の下痢が膵臓に関連しているかを調べる血液検査で、膵特異的リパーゼ=Spec cPL(犬の急性膵炎や慢性膵炎の可能性を検出する検査)、犬トリプシン様免疫反応物質=TLI(犬の膵外分泌不全を検出する検査)があります。
犬の下痢が肝臓に関連しているかを調べる血液検査で、総胆汁酸、アンモニアの濃度を調べることがあります。いずれも完全絶食下で一度採血し、その後食事を摂取させてから時間を置いて再度採血をし各々の数値の濃度変化を調べる検査で、通常は預かり検査となります。
犬の下痢の原因のうち主に食物アレルギー(食事アレルギー、食物不耐性)が疑われる際に行う血液検査の一つです。ある一定の食事を食べると下痢をする傾向のあるワンちゃんで検査をするか検討されますが、血液検査の費用が人の場合と比較して高額です(医療機関や検査する内容により幅がありますが、おおよそ1万〜6万位かかることがあります)。また、犬のアレルギーのメカニズムは人と一部異なることもあり、検査の精度にやや難があり検査結果と実際の症状がリンクしないことが往々にしてあります。その為、食事を食べて下痢するので直ぐアレルギー検査を行う、と言うのはやや短絡的で誤診の原因にもなります。犬のアレルギー検査は動物病院で一時期流行っていた印象がありますが、そのような検査精度と費用の問題から検査をする機会は減っていると思います。犬の食物アレルギー(食事アレルギー、食物不耐性)が強く疑われ、本当に必要な時に限ってアレルギー検査を検討するのをお勧めします。
犬の下痢で食物アレルギー(食事アレルギー、食物不耐性)が原因として疑われる、もしくはアレルギー検査結果で、ある食物の反応が強く出ている場合に考慮される試験です。例えば、鶏肉、豚肉、牛肉が含まれている食物で必ず下痢をする、もしくはアレルギー検査で鶏肉、豚肉、牛肉に対して強く反応が出ている場合に、それらの食材をまったく使用していないフードをしばらく与えることで症状が消失するかどうかを確認します。
アレルギーの原因になっている食材を全く含まないフード(除去食といいます)を1〜2ヶ月ほど続け(食物アレルギー性下痢の場合は、もう少し短期間の約2週間ほどで症状が改善していくことがあります)、犬の下痢の症状が改善するかどうかを判定します。その間は、除去食以外のフードやおやつなどの食物を一切与えないように厳密な食事管理を行うことが必要です。
(*1)おやつや間食を与えたい時は、除去食のフードをおやつとして代用しましょう。
(*2)除去食の種類;除去食にはいくつか種類があるため以下に解説いたします。
犬のアレルギー性の下痢症状がでないように設計された、今まで食べたことがないタンパク質などの食材から構成された処方食のこと。サーモン、ニシン、ダック、チキン、タピオカ、ポテト、大豆などの原料を限定したものを主成分としており、近年は色々な種類の処方食が作られています。
犬のアレルギー性の下痢の原因になるタンパク質を加水分解、あるいはアミノ酸レベルで分解した処方食のことです。加水分解食よりもアミノ酸食が優れていますが、アミノ酸食は加水分解食やその他の処方食と比べても非常に高価なのが唯一の欠点です。
犬の食物アレルギー性の下痢で原因になっている食物を含まないご飯を、在宅で飼い主さんが調理して作る手作りのご飯のことです。
確かに食物アレルギーに対して有効な場合はありますが、犬の栄養学的な観点から言うと、犬のご飯を手作りでしっかり賄うのは非常に難しく、栄養分の偏り、栄養失調になってしまうことがあります。実際、獣医師の中でも犬の手作り食に関しては賛否が分かれていますが、現在ワンちゃんが皮膚病や下痢などの症状で困っていないのであれば、なんとなく良さそうと思っての手作り食、SNS投稿のためや無添加にこだわりたいだけ等、安易な理由から手作り食を始めるのはワンちゃんの為にならないことが多く個人的にお勧めしません。
犬の食物アレルギー性の下痢で、除去食試験が成功し下痢症状が改善された場合、除去食に含まれていなかった食材=犬の食物アレルギー性の下痢の原因物質を敢えて加えていくことで、下痢の症状が再発するかどうかを確認し、アレルギー物質を完全に特定する方法です。
厳密に言うと、犬のアレルギー性の下痢で原因物質を確定させることは獣医学的に必要なことで正しい検査ではありますが、食物負荷試験を行うことでワンちゃんは下痢の原因物質に暴露され下痢症状がでてしまう、場合によっては強い症状が出て悪化するリスクもはらんでいます。
個人的な意見になりますが、ワンちゃんの負担を考えるとこの食物負荷試験を敢えて行うことを積極的に推奨はしていません。
犬の下痢の際に尿検査が必要になることがあります。人の場合と同様に犬の尿検査は内臓関連、特に泌尿器系(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に関連した病気を特定するために非常に有用な検査です。具体的には、腎臓病(慢性腎臓病、腎盂腎炎、タンパク漏出性腎症など)、膀胱炎(細菌性、真菌性、稀に寄生虫など)、尿石症(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などの可能性の有無など)、泌尿器の腫瘍(腎臓腫瘍、膀胱腫瘍など)、糖尿病、副腎疾患(クッシング症候群)、その他(肝臓疾患、血液疾患、前立腺疾患の可能性など)の診断に役立ちます。
(*)尿検査に用いる尿について
犬の尿検査に使用する尿は、なるべく無菌的に液体の状態で採取し、常温で保管し、可能な限り早めに動物病院にお持ちいただいて検査をすることが必要です。ペットシーツに排尿したもの、地面に排尿したもの、冷蔵庫で保管したもの、排尿してから時間がかなり経過してしまったものなどは、検査結果に影響するためご注意ください。自宅や散歩中での採尿が難しい場合は、病院内で直接採材することも可能なので動物病院へご相談ください。
犬の下痢の際にレントゲン検査が必要になることがあります。主に、異物摂取、胃拡張、胃捻転、腸閉塞/腸重積、腫瘍(胸部、腹部)、心臓の形態異常、肺疾患の有無(肺炎、気管支炎、肺の腫瘍、肺への転移象)、尿路結石の有無(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石など)、消化管(胃、小腸、大腸)のガス貯留や異常な蛇行、リンパ節の腫れ(胸部、腹部、頭頸部)、胸水/腹水の貯留などの検出に有用です。
犬の下痢の際に、レントゲン検査やその他の検査で主に異物摂取などの可能性が高い場合、バリウムなどの造影剤を使用し行われるレントゲン検査です。バリウムを飲んだ状態で時間をかけ何度もレントゲンを撮影し、消化管内を移動するバリウムの動きをみて異物の存在の有無や胃腸の動きの程度を判断していきます。後述するエコー検査の精度の向上や、内視鏡検検査の普及によりバリウムによる造影レントゲン検査の実施頻度は従来よりも減ってきています。
犬の下痢の際にエコー検査が必要になることがあります。エコー検査は超音波により生体内の断層像を撮影することで、体内の変化を検出していきます。超音波は体に全く無害で基本的に検査で麻酔を必要とせず、また、近年検査機器性能の向上で得られる情報の精度が非常に良くなっている為、治りにくい犬の難治性の下痢の際などには必須の検査となっています。検出できる病気や症状に関しては、心臓の病気、肺の病気、肝臓の病気、腎臓の病気、尿管の病気、膀胱の病気、尿石症(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、時に尿道結石)脾臓の病気、胃の病気、腸の病気(小腸、大腸)、膵臓の病気、前立腺の病気、卵巣の病気、子宮の病気、副腎の病気、血管の異常、血栓の有無、腫瘍の有無(胸部の腫瘍、腹部の腫瘍など)、異物摂取の有無、胸水・腹水貯留の有無など多岐にわたります。
下痢をしている犬で触診、レントゲン検査やエコー検査で胸部や腹部またはそれ以外の部位で発見された腫瘤に対して、または下痢の原因となっている臓器に対して、小さい針を刺し細胞を採取し顕微鏡を用いてその細胞を分析する検査のことです。
通常、検査には麻酔を必要としないため、ワンちゃんの負担は少ないですが、得られる情報は非常に有用なことが多々あります。
細胞診検査の目的は主に腫瘍かどうかの判断(リンパ節の腫瘍、胸腔内の腫瘍、心臓の腫瘍、肺の腫瘍、肝臓の腫瘍、脾臓の腫瘍、腎臓の腫瘍、膀胱の腫瘍、口腔内の腫瘍、胃の腫瘍、小腸の腫瘍、大腸の腫瘍、皮膚の腫瘍、足の腫瘍など)、時に臓器の変化(肝臓の病気など)を調べるのに有用です。
細胞診では、後述の胸水・腹水検査の中で細胞診を行うことで、犬の下痢の原因の手掛かりを得られることもあります。
犬が下痢をしている時に、胸水や腹水(胸の中、お腹の中に水分が溜まっている状態を指します)が貯留している場合があり、その溜まっている水を抜いてその成分を分析することで下痢の原因を特定していく方法です。検索できる病気の例としては、腸の病気(腹膜炎、胃腸の穿孔、タンパク漏出性腸症など)、腎臓病(タンパク漏出性腎症など)、乳糜胸(にゅうびきょう)、膿胸、心臓病(右心不全、時に左心不全、心嚢水、心臓からの出血など)、胸部および腹部の腫瘍もしくは悪性腫瘍の転移の有無などがあります。
犬が下痢をしている時に、内視鏡検査(内視鏡生検)が必要な場合があります。内視鏡検査は、犬の場合は全身麻酔が必要で、検査費用も比較的高額になることが多く、人の場合と比べて検査を行うハードルが少し高いことがデメリットとなります。
内視鏡検査は、犬の小腸性下痢では上部消化管の胃、小腸(十二指腸)を検査します(人で一般的に胃カメラとも呼ばれる検査です)。犬の大腸性下痢では下部消化管の大腸(結腸、直腸、時に回盲部まで)を検査します。
犬の内視鏡検査では、内視鏡のカメラを通じて胃腸の表面(粘膜面といいます)の状態を肉眼で観察し病変がないかどうかを調べたり、特殊な染色液で病変を描出しやすくしたり、異物を飲み込んでいたら特殊な鉗子(ワイヤーのような形状の器具)を内視鏡スコープに挿入して異物を回収したり、胃腸の粘膜の一部を特殊な生検鉗子を用いて採材し病理組織検査を行なったりします。一部の動物病院では、犬でも内視鏡を用いた胃腸の手術を行う施設もあり、ポリープ状や潰瘍状などの病変に対して内視鏡用のレーザー器具、ITナイフ、凝固装置(アルゴンプラズマ凝固)などが使用されています。
試験開腹手術とは、犬の下痢の原因が各種検査で特定できない場合に、全身麻酔下で試験的に開腹手術を行い、直接お腹の中を調べる方法です。具体的に試験開腹が検討されるケースとしては、犬が異物を誤食している可能性が強く疑われるが完全に特定できない場合や、犬の胃腸の壁(粘膜〜筋層)の病気が強く疑われるが内視鏡生検など他の検査で特定できない場合、犬のお腹の中に腫瘤があり検査で腫瘤以外に下痢の原因となるものがない、或いは腫瘤が腫瘍の可能性が高くいずれにせよ外科切除が必要な場合などが挙げられます。
犬の下痢の原因を特定するために、CT検査やMRI検査をすることが稀にあります。CT検査やMRI検査は体の中をくまなく調べるためには大変有用な検査ではありますが、通常ワンちゃんの場合は全身麻酔の検査になるのと、検査にかかる費用が高額になる事が多いため、犬の下痢の際にCT検査やMRI検査をする機会は少ないです。主に下痢と関連性のある原因精査で、異物関連の検出、体の腫瘍性病変の有無、腫瘍性病変を手術する前の術前評価のため、詳細な臓器の画像検査が必要な場合に検討されます。
監修:にじいろアニマルクリニック 院長 獣医師 石塚 洋介
参考文献:
・SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE 3rd ed; Interzoo.
・犬と猫の治療ガイド2015; interzoo.