基本となる診療方法
医療技術の発展により、動物の腫瘍(がん)の治療は従来よりも選択肢が増えてきています。
動物の状態や“がん”の種類や場所によって最善の治療をご提案させていただきます。選択肢としては、
① 従来の外科治療
手術でとれる腫瘍(がん)は今でも第一選択となっています。手術で完全切除できれば完治が望めます。
② 従来の抗がん剤療法
抗がん剤は以前よりも使用方法が確立されてきており、副作用を最小限にしつつより確実な治療に繋げることができるようになってきています。手術の前後での補助療法としてや、リンパ腫などの血液系の腫瘍などに使用されます。
③ 分子標的抗がん剤
比較的新しいタイプの抗がん剤です。ピンポイントで腫瘍が増殖するための因子を分子レベルで抑えていくお薬です。
従来の抗がん剤よりも副作用が比較的限定されています。犬の肥満細胞腫(や消化管間質性腫瘍=GIST)に有効性が認められています。
また、一部の固形がん(肛門嚢腺癌、乳癌、扁平上皮癌など)の増殖抑制効果も発見されて注目を浴びています。
④ 消炎鎮痛剤
痛み止めの薬が一部の腫瘍(がん)で増殖抑制効果が認めれています。
主に膀胱腫瘍(移行上皮癌)、乳癌で使用されています。
⑤ メトロノーム療法
微量の抗がん剤と消炎鎮痛剤を使用し、少ない量の薬を持続的に長く投薬していく方法です。
腫瘍(がん)との共存を目指す、もしくは緩和ケアとして用いられます。
⑥ 放射線療法
放射線を腫瘍(がん)に直接照射しピンポイントで治療していくことが可能です。手術の前後や手術中に行ったり、手術が難しい場所の腫瘍(がん)に使用することができます。
動物では照射するにあたって全身麻酔が必要で、放射線治療の医療機は大掛かりで行える施設が限られており、費用も高額なため、実施できる機会は限られています。
⑦ 光線温熱療法
特殊な色素と薬剤を腫瘍(がん)に注入した後に、ある一定の周波数の光を腫瘍に当てることで腫瘍の縮小効果が期待されます。
⑧ 一部のサプリメント療法
ごく一部のサプリメントで腫瘍の増殖抑制効果が認められています。
⑨ 一部のがん免疫療法
免疫成分の一つのインターフェロンを腫瘍(がん)に注入することで、一部の腫瘍(がん)に増殖抑制効果があったという報告がされています。
(*)腫瘍の治療方法に関する注意事項
昨今インターネット上で誤った腫瘍(がん)治療の情報が多数氾濫しています。特に、⑧サプリメント、⑨がん免疫療法は、医学的根拠や治療効果が全くないにも関わらず高額な費用がかかるものが多数占めています。
腫瘍(がん)で弱った動物とそのご家族に、『副作用が全く無い』、『自然な治療で負担が少ない』などのキャッチフレーズでの心の隙間を狙うような商品、治療が横行しています。
気になる治療法を見つけた場合は決して自己判断せずに、必ず病院スタッフにご相談ください。
大切なご家族に誤った治療を受けさせないために、当院では適正な情報提供と適切な治療の選択肢をご提示できるように心掛けております。